楽曲解説 by d-music

(作者による楽曲の解説とは、野暮なものですが、ご興味をお持ちになった方は、ご覧ください。)

「あなたの笑顔〜トゥトゥアロハ〜」


 「ホレホレ節」というタイトルを最初に耳にした時、「ここ掘れの掘れ掘れ」なのか「好いた惚れたの惚れ惚れ」なのか、はたまた、はやし言葉の「ホレホレ!」 かとピンと来なかったのですが、ハワイ移民の方が従事した作業「holehole」のことだと後から知ることとなります。

 この「ホレホレ節」をもっと世に広めたいというプロデューサーの言葉を受け、一から調べ直したのですが、 ハワイで生まれた日本民謡であるというばかりでなく、歴史を背負い、たくさんの方の思いが詰まった歌であることから、 実際にはその苦労を何も知らない我々の世代が、安直に取り上げて良いものか悩みました。

 ただ、改めて考えてみると、我々の下の世代になると、ますます、この歴史の重みを知らないこととなり、 この歌を含めた歴史を伝えていく役目があってしかるべきと考えるようになりました。

 これまで、何度か「ホレホレ節」自体はレコーディングをされたことがあったのですが、私同様、その語幹から 誤った先入観を持ったり、また、実際の「ホレホレ節」は何十番もあるのですが、歌詞は、方言や、ハワイ語、英語のちゃんぽんで 何を歌っているのかが分かりづらい面がありました。

 そこで、あくまで「ホレホレ節」の紹介ソングとして、実際に我々の世代が受け継いで、また次世代に託していくという状況にして、 歌い手の北山みつきさんがその世界に溶け込めるようにしたいと思って作ったのが、この作品です。

 原曲の「ホレホレ節」は意味の分かりやすい2コーラスだけ採用しました。歌詞自体は、伝わってきた民謡のため、てにをはの違いを 含めいくつもバージョンがあるので、広く流布しているものとは異なる箇所もあります。

 もう一つ、「ホレホレ節」自体に、直接関わり合いがあることでは無いのですが、ハワイ移民の方々の歴史を鑑みるに、 太平洋戦争のことは避けて通れないと感じました。

 まさしく、日本に帰るも、アメリカへ行くも、ままならない状況で、自分の祖国と信じる国からの爆撃を受けることになったこと。 そんな悲惨な歴史があったにもかかわらず、この「ホレホレ節」を祖国とのつながりとして大切に歌い継いできたということ

 このことを、どうしても伝えたくなりました。

 実際には二世の方々はアメリカ軍として、主にヨーロッパ戦線で従軍し、輝かしい戦功を収めたことにより、後の日系人の地位向上に つながっていくわけですが、戦争はしょせん戦争です。

 ただ、ハワイという気候のせいでしょうか、そういった数々の苦労も、穏やかな気持ちで受け止め、悲惨さを訴えることなく 優しい笑顔で伝えていく。そんなおばあちゃんの笑顔が頭に浮かびました。

 編曲の中村暢之先生は、この気持ちを受け止めて、無国籍風の、実に包み込むような音楽に仕上げてくれました。

 歌手の北山みつきさんには、力を込めて歌うことなく、優しく易しく歌ってもらいました。

 波の音を感じながら、聞いていただければ幸いです。 

[追記]
歌詞カードその他で、最後のサビの歌詞の感じが「戦に狩り出され → 戦に借り出され」となっていました。
確かに、そういったニュアンスもありますが、元々はもっと強い意味での「狩り出され」です。

[動画について 13.11.1追記] ハワイに詳しい方なら、突っ込みどころがたくさんあるかもしれません。特に頭につける飾りの扱い。
正式には髪飾りでは無く、耳飾りだそうで、左右のつける場所なども意味があるので、実際とは異なる部分があります。
知識としてはありましたが、企画の段階で、そこまで気が回らなかったということで、ご容赦ください。


「花火 #9」


 2012年夏、福島県の玉川村の花火大会に伺いました。

 到着して、最初にかけられた言葉が、「この辺りは放射能は大丈夫ですから」

 すぐに、返す言葉がありませんでした。

 急な坂を登ったところに会場はしつらえてありました。野外のイベント会場で、天気も良く、 こういった会場で歌う歌があるといいなと思い、帰りの電車の中で、できた曲が 「花火」です。最初は#9はありませんでした。

 当日は、早めに失礼しなくてはならず、花火自体は見られなかったのですが、 その後、湘南海岸で花火大会を見る機会がありました。

 夜の闇も降りて、いつ始まるのかと待っていたら、突然、ドンという音が響いたかと 思ったら、頭上いっぱいに花火が拡がり、火の粉がかかるほど、降り注いできました。

 そうやって、その後何回か書き直してできた曲がこの曲です。

 数えてみたら8回書き直して、9番目に完成した曲です。

 正式なタイトルをつけるに当たって、大学時代の友人を思い出しました。

 仲の良い友人と三人で、よく夜中に楽器の練習をしていましたが、そのとき、練習していた曲が 「#2」というタイトルのオリジナル曲です。
 その友人二人も、一人は脳梗塞で倒れ、もう一人は、昨年急死しました。

 そこで、友人に捧げる意味もあって、#を9番目の曲なので9を付け加え、ビートルズの曲 revolution no.9やジョンレノンのNo.9ドリームの響きが好きなので、#9と書いてナンバーナイン としました。

 他にも、歌い手の思い、ディレクターの思い、プロデューサーの思い、そして、支えてくださっているファンの皆様への思い。さまざまな思いを九つ 詰め込みました。

  [追記]
   2013年夏、再び、玉川村を訪れる機会をいただき、山の端にかかる花火を楽しんで来ました。

「花火#9」という短い小説も書き上げました。

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